2024/03/26 (Tue) 07:47:23

「源氏物語」を見る - sigma2

20240326日経「源氏物語」を見る(5)明石 伝土佐光信「源氏物語図屏風」 恵泉女学園大学教授 稲本万里子

須磨の地を嵐が襲う。雷が落ちて火災が起き、憔悴した光源氏の夢のなかに桐壺(きりつぼ)院が現れた翌朝、夢のお告げどおり、明石(あかし)の入道(にゅうどう)からの迎えの舟がつく。今治市河野美術館の「源氏物語図屏風」は、右隻にこの場面が描かれている。

画面右手には檜皮葺(ひわだぶき)の建物が大きく描かれ、画面左上方には海原が広がり、うねる波間を縫うように一艘の小舟が近づいて来る。蔀(しとみ)を開けた板敷きの室内から、小舟のほうを眺めている白い直衣(のうし)姿の人物が光源氏、簀子(すのこ)に坐り、光源氏と同じ方角を見ている従者と、左上方を指差し、光源氏のほうを振り返っている従者は、惟光(これみつ)と良清(よしきよ)であろうか。左隻は、浮舟(うきふね)に逢うため宇治にやってきた匂宮(におうみや)が、警固が厳重で入ることができない場面である。

この屏風絵の特徴は、濃彩(のうさい)で描かれた人物に対し、ゴツゴツとした岩には、濃淡をつけた薄い色が施されているところである。おそらく墨の濃淡をつける水墨画の手法を取り入れたものと考えられる。屏風の左右にある極書(きわめがき)から、土佐光信(みつのぶ)(生没年未詳)筆と伝わるが、光信の子、光茂(みつもち)(生没年齢未詳)周辺の絵師によるもので、中世と近世を繋(つな)ぐ、室町時代の貴重な作例である。

(室町時代、紙本着色、六曲一双、各179.2×379.9センチ、今治市河野美術館蔵)
2024/03/26 (Tue) 18:53:54
Re: 「源氏物語」を見る - 越智春樹
河野美術館に、こんな屏風絵が有るのは、初めて知りました。身近な所に、良い物が有るんですね。越智