文春に、加藤登紀子さん(81)、私の「大往生」が載っていました。『最近ふと思ったの。浦島太郎は竜宮城でタイやヒラメの踊りを見ている間は月日の流れを忘れて、年を取らなかった。それっていいなあって(笑)。私は瞬間の中に時間を閉じ込めてしまうこの魔法のことを「タイやヒラメ理論」と名付けています。思えば人間は、音楽でも絵画でも文学でも、あらゆる芸術において時間を瞬間に閉じ込めることに一生懸命になってきた。十年分の歴史をワンフレ-ズにしたり、三分間の曲にしたり、人間はそういうマジックをたくさん持っているんですよ。できることなら、私は元の浜辺に戻らない浦島太郎でいたい。竜宮城にとどまって、タイやヒラメの瞬間の中に消えていくの。それが私の「理想の最期」でしょうか。』越智